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第37回卒業証書授与式 式辞

 桜のつぼみがふくらみはじめ、吹く風が春の訪れを感じさせるこの佳き日に、PTA会長結城勝美様、後援会長鹿倉麻由美様、学校評議員同窓会長横山寿世理様、学校評議員さいたま市立植水小学校長保坂泰司様、さいたま市立土屋中学校教頭伊藤浩士様 をはじめ、ご来賓並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、埼玉県立大宮光陵高等学校第三十七回卒業証書授与式を挙行できますこと、大変うれしく存じます。卒業生はもとより、私ども教職員、在校生にとりましてもこの上ない喜びであり、ご臨席賜りました皆様に厚く御礼申し上げます。

 さて、ただ今呼名のありました三百九名の第三十七期、卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。今日までの学校生活には、楽しかったことや嬉しかったこと、時には辛かったことや悔しかったこともあったことでしょう。そうした記憶の一つ一つが、今、皆さん一人一人の胸の中で思い出されているところと拝察します。

 振り返ると、皆さんが本校に入学した当時は、まだコロナ禍にありました。中学生のときから高校二年生の五月までの間は、皆さんだけでなく、社会全体がそうであったように、新型コロナウイルス感染症との戦いの日々でした。高校入試のときは、大きな不安を覚えた人も少なくはなかったと思います。みごと大宮光陵高校の合格を勝ち取ったにも関わらず、入学後、日常の学習活動に様々な制限が課せられたままで、思い描いていた高校生活がなかなかままならず、残念に感じたこともあったことと思います。音楽の時間に歌うことができませんでした。昼食時間は、黙食という言葉のとおり、友達と楽しく話しながら食べることができませんでした。どんなんに暑い日であってもマスクをしたままで、大声で笑い合うこともはばからなければならず、それでもみんな黙って耐えました。こんな我慢がいつまで続くのか、という不安とともに送った高校生活のスタートだったと思います。みんなよく頑張って、ここまできたと思います。

 二年生の5月になって、新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類となり、これでようやくコロナ禍前の状態に復旧できるのかという希望が見えたものの、既に常態化してしまった抑制的な生活からの解放に戸惑うこともしばらくはあったと思います。とはいえ、それからの皆さんは、生き生きと、はつらつと、徐々に光陵生らしい学校生活を取り戻してくれました。昨年の光陵祭の盛況ぶりや、体育祭の盛り上がりがその証左でしょう。各部活動の活躍も私たちを元気にさせてくれました。本来あるべき日常を取り戻せたと実感できるようになれたのは、そんな三十七期の卒業生の皆さんの頑張りと笑顔のおかげに他なりません。コロナウイルスに打ち勝って、上級生として先頭に立ち、大宮光陵高校を牽引してくれました。本当にありがとう。

 一方で新型コロナは、社会の様々なところにこれまでになかった変革をもたらしました。DX化が推進され、テレワークという新たな働き方や、オンラインのミーティングなども広まり、社会生活がメタバースに拡大していく様子を実感するようになりました。高等学校の教育においても今ではタブレット端末を活用した学習活動は日常化しています。大きなピンチは現状を超えるためのチャンスなのかもしれません。また、皆さんを見ていると、ピンチは人を強くして、一回り大きくさせるチャンスなのかもしれないとも思えます。

 以前、私は、皆さんにシンギュラリティについて紹介したことがありました。私たちは大きなパラダイムシフトの時代に突入するだろうと言うある発明家の話題です。ともすると、もはや突入しているという説もあるそれです。それはかつて世界が経験した十八世紀後半からイギリスで始まったとされる産業革命にも似た大きな技術革新です。産業革命では、これまで人が人の手で作ってきたモノづくりが、工場の機械にとって代わって大量に生産され、社会を大きく転換させました。物質的に豊かな社会になった一方で、人間の内なる熟練が械機へと外部化されるという変革でした。今度私たちが経験する変革は、これまで人が脳の中で行ってきた情報の貯蔵・伝達・処理が、いよいよ機械へと外部化される時代へと突入することを意味します。最近では、生成AIの一つであるチャットGPTが、多くの人に利用されています。また、自動運転なども実用化実験がなされるようになりました。こうした指数関数的な速度で拡大していくイノベーションの進展によって、二十年後、皆さんが働き盛りを迎える頃は、この世界はどのようになっているでしょうか。人工知能の能力が人間の能力を遥かに超えて上回り、人間の力ではもはや機械の力には太刀打ちできない、しかも、後戻りのできない世界が、もうすぐそこまでやってきています。これまであった職業が自動化の進展によって消えていく反面、新たな仕事が次々と生まれるとされています。しかし、我が国が抱える深刻な少子高齢化社会の到来に加え、グローバル化と保護主義が錯綜する複雑な現在の世界情勢にあって、これからは予測困難な時代というよりも、むしろ覚悟が必要な時代を皆さんは生き抜いていかなければならないかもしれません。

 それでは何をよりどころにこれから生きてゆけばよいのでしょうか。それはやはり、皆さんが大宮光陵で学んだことが基盤となると私は確信しています。思い出してください。大宮光陵高校の校訓は、自立・協調・創造です。

 まずは自立です。社会に出たら、どこかの誰かが貴方のために、貴方を楽しませようと日夜頑張って努力しているわけではありません。よりよく生き抜くためには、自らの意志と身体をもって、時代を見据え、アンテナを高く張り巡らせ、周囲の状況やニーズに応じて自ら自分自身を常にアップデートしてしなやかに生きる自立した自己を獲得することが必要です。

 また、全ての人に敬意を払うことができ、相互に支え、支えられ、他者と協調しながら生きることができる豊かな人間性の備えも必要です。自分だけが良ければいいということではなく、他者の幸せを自分ごととして感じ取ることができて、集団の中の自己を自覚し、その役割を担い、社会に貢献すべく意欲的な行動が望まれます。

 創造は、正に大宮光陵が大宮光陵たる所以といえましょう。創造とは、これまでになかったものを新たに創り出すことです。これから一層進展することが予想されるイノベーションの世界へ、これまでにない生き方のデザインを提案し、自らが新しい仕事を生み出す担い手となって世界で活躍してくれたらと期待しています。

 皆さんは、本校教育活動の幹に貫く校訓をとおしてこうした素養を学んできました。優しい心を持ちながら、爽やかに、しかも強くたくましくゆるぎなく、光り輝く未来をきっと創造してくれると、私は信じています。

 明日からは皆、三年間過ごしたこの光陵高校を巣立ち、それぞれの進む道に向かってはばたきます。三十七期生の皆さんが、自らの力で人生の楽しみを見つけ、生きがいを見つけ、強く生きていくことを心から願っています。

 改めまして、保護者の皆様、お子様のご卒業誠におめでとうございます。今日までのお子様との生活の中には、私どもには計り知ることのできないご苦労があったことと拝察いたします。この三年間、毎日お子様を送り出してくださり、本当にありがとうございました。保護者の皆様の後押しによって今、お子様はこのように大きく立派に成長することができました。

 学校として至らない点も多々あったことと存じますが、今日まで本校の教育活動にご理解とご支援を賜り、心から感謝申し上げます。私たち教職員も微力ながら、これまで精一杯、お子様の成長を見つめ、一人一人の力を伸ばし、高め、ときに寄り添い、支えるお手伝いができたこと、大変光栄に存じております。職員一同、この経験を糧に、今後とも本校の教育活動に邁進してまいります。

 むすびに、本日はご多用の中、ご臨席を賜りましたご来賓並びに保護者の皆様に心より感謝申し上げますとともに、卒業生全員の限りない成長と健康をお祈りし、式辞とさせていただきます。

 

  令和七年三月十日

 

    埼玉県立大宮光陵高等学校長 矼 秀年